【メジャー競技“じゃないほう”座談会・中編/ビーチバレー×フットサル】倉坂正人(ビーチ)×藤井桜子(ビーチ)×田口元気(フットサル)「メジャー競技以上にコミュニケーション能力が大事」(田口)

SAL

【軍記ひろし】

日本国内でメジャースポーツと言われるバレーボールとサッカーがある一方で、主流にはなれない“じゃないほう”の競技。それがビーチバレーボールとフットサルだ。メジャースポーツと同じように国内リーグが開催され、世界大会があるようなトップ競技でありながらも、両者は陽の目を見る機会が少ない。

ただし、「じゃないほう」ではあっても、そこで戦う選手は、メジャースポーツの選手と同じように努力を重ね、アスリートとして競技に打ち込んでいる。彼らは彼らなりに考え、それぞれの競技の発展を願う。

ビーチバレーボールの倉坂正人と藤井桜子と、フットサルの田口元気。20代中盤から後半の年代の彼らはこの先、自分たちの競技を背負っていく存在。日々、どんなことを感じながらプレーして、この先、どんなことを考えてプレーしていくのか。3者の共通点や相違点、未来へのビジョンを、語り合った。

自分を伸ばせる現状だから悲観はしていない

藤井 フットサルの環境を伺ってもいいですか? どういったリーグがあって、とか……。

田口 もちろんです。今は、トップリーグ(Fリーグ)に12チームが所属しています。昨シーズンからF2というカテゴリーができて、そこに8チームがいるので、Fリーグとしては20チームですね。各チームに15人から20人くらいがいるので、Fリーガーは全国に400人くらいいます。

倉坂 フットサルって交代が自由ですよね?

田口 そうです。

倉坂 すごく交代するイメージがありますね。

田口 かなり無酸素運動が多くて長い時間のプレーが難しいので、交代しながらやります。12チームでリーグ戦を3周するんです。去年であれば上から3チームがプレーオフに進んで、プレーオフ準決勝、プレーオフ決勝を戦って優勝を争っています。あとは全日本選手権という、アマチュアを含めて予選から戦って、日本一を決める全国大会もあります。もう一つはリーグのカップ戦があるので、国内のトップカテゴリーではこの3つのタイトルを懸けて戦っていますね。そういうところで戦う選手から日本代表が選ばれます。フットサルのスケジュールとしては、だいたい6月くらいからリーグ戦が始まって、2月、3月まで続きます。

藤井 あれ、そもそもフットサルってインドアですよね? でも芝でもやっていますよね?

田口 そうですよね……その印象ですよね。

藤井 すみません、基本的すぎる質問で。屋上とかで芝でもやっていますよね?

田口 そうです。人工芝のコートですね。実は、トップリーグで戦う選手たちは基本的には体育館などのフロアで試合をします。スポーツコートを敷いたり、バレーボールなどでも使われているタラフレックスのコートを敷いてやったり。フウガドールすみだの試合は、1試合で1200から1300人くらいを平均して集客します。キャパが1500人から2000人くらいの施設がほとんどですね。

藤井 あ、私、見にいったことある! 町田にもチームがありますよね。ペスカ……。

田口 ペスカドーラ町田ですね!

藤井 思い出した(笑)。ごめんさない。サッカーを含めてカテゴリーがたくさんあるので、フットサルも芝だったかなって思い込んでいたみたいで……。

田口 なるほど、こういうことなんですね「じゃないほう」って(笑)。記憶にないと。

藤井 いやいや、記憶にはありますよ! でもなぜか一致していなくて(苦笑)。

倉坂 じゃあ、町田で見たそれはなんだと思っていたんだろう(笑)。

藤井 フットサルって芝でやる感じかと……。

田口 ははは(笑)。実際、いろんな方とお話しするときに話題になるのですが、みなさん芝でやっていると思っているようです。僕らは芝ではやらないんです。

【軍記ひろし】

──先ほど、「ビーチバレーは究極のバレーだ」という話がありましたが、フットサルとサッカーの関係性はどういったものなのでしょうか?

田口 もちろん、人数が11人から5人になるので、ボールに触れる回数が増えるといったことはあります。これは僕の個人的な考えなのですが、両者は同じフットボールなので、競技性が少し変わるだけ。人数が減って、バスケに近くなるイメージです。でも本質的には変わらないと思っています。かといって、サッカーがすごくうまい人がフットサルをやって、すぐにうまくできるかというとそうではない。

藤井 サッカーからくる選手が多いということでは、どういう選手が合うんですか?

田口 フットサルで活躍している選手は、フットボールの特性をよく理解している人が活躍できると思います。言い方が適切かはわからないですが、サッカーは“うやむや”にできてしまう。

倉坂 すごくわかります!

田口 サッカー日本代表では、今は特に若い選手がどんどん活躍して結果を出していますよね。でも、フットサルは意外とそうではなくて、今も代表の第一線で活躍するのは30歳を超えた選手が多かったりします。

倉坂 経験がものを言う部分が大きい。

田口 そうです。一つのミスが失点に直結しますし、勝敗を左右してしまいます。おそらくバレーボールもそうですし、(人数の少ない)ビーチバレーならなおさらそうではないでしょうか。

藤井 誤魔化せない感じはすごくわかります。

田口 サッカー以上に得点が入るスポーツではあるのですが、とは言え、10点、20点が普通に入るスポーツではありません。なので1点の重みがすごくあります。サッカーでは失点に直結しないものが、フットサルでは失点につながってしまうケースが多いです。だから若い選手は、どうしても長い時間、起用されることが少ない。スポットで起用される。ずっと活躍できる選手は、大舞台を含めていろんな経験を積んで、いいところも悪いところもよく理解してプレーしている選手だということ。そのことを痛感しています。僕自身は正直なところ、「速い」選手がいい選手だと思っています。速く動ける、素早く正確にボールを扱える、より早くロジカルシンキングできないといけないとか。来年で28歳になるのですが、そういうことはこの2年くらいでようやく考えられるようになりました。「速い」というのは、ただ速いだけではいけないと思っています。そういう「速さの質」を捉えて、脂が乗ってくる年齢が異なるのかなと思います。

【軍記ひろし】

──ビーチバレーは2人のコミュニケーション能力も大切です。フットサルもそうですか?

田口 すごく重要です。サッカーであれば、ある程度は結果で語れる部分があると思います。相手からボールを奪うとか、点を決める、相手を抜くとか。でもフットサルは、基本的にはGKを除くフィールドプレーヤーの4人でピッチに立って、4人で結果を出すという認識が強い。ピッチに立ったときに、相手の戦術と自分たちの戦術がマッチしないこともあるのですが、そういう選手が肌で感じていることを、中で話し合って、自分たちでトライ&エラーを繰り返します。戦術的な話をしないといけないので、自分が思っている考えをしっかりと伝えることも、相手が話す内容をしっかりと聞くことも大切です。言いたいことを言うだけではダメ。今、自分は企業で総合職というか、営業などをしているサラリーマンでもあるのですが、会社も同じような組織ですから、フットサルの経験が仕事ですごく生かされています。コミュニケーション能力ってめちゃくちゃ大事だなと思っています。やっぱり、2人での話し合いも大事ですよね?

倉坂 僕らも戦術を変えるためにコミュニケーションを取るのですが、2対2なので「片方をつぶす」みたいな戦い方もあるわけです。自分のパートナーが狙われたときに、ただ「こうしたほうがいい」というだけではなく、気持ちを整えるための発言が必要だったりします。

田口 なるほど! それは僕たちはあまりないかもしれないです。

倉坂 気持ちが沈んだり、体力が奪われたときにどういう話をするか。相手によって言葉遣いも違います。僕も会社で営業をしていたので、コミュニケーションやロジカルシンキングを意識しています。人に対して、何をどのように伝えるのかも、ビーチバレーの技術の一つかなと感じています。

田口 ということは、ペアがすごく大事ですね。

藤井 そう、すごく大事です。

田口 プレーの相性もそうですけど、性格面もそうですよね。最近、僕は心理学を勉強しているのですが、よかったなと思うのが、相手を思う能力があると知ったこと。フットサルでも、若手とベテランがなかなか融合できないことが起こるのですが、僕のような中堅と呼ばれる年代の選手が、どうやって舵を取れるのかが大事になってくると思っています。

倉坂 たとえば、技術的には相手に劣ってしまっていても、4人のコミュニケーションで勝つこともできる。

田口 あります。味方同士でいいときも悪いときもある。4人のセットを2つ作って交代しながら戦うのが一般的には多いのですが、自分たちの4人の調子が良くないときには、「俺たちは失点しないようにしよう」ということもあります。「ゴールは向こう(のセット)に任せよう」と。常に4人で統一した意識を持つ必要があります。

倉坂 そういうのって、観客として見ていてもわかるものですか?

田口 僕は、それを伝えることがファンを増やす一つの手段かなと思っています。なので、SNSなどを使ってどんどん発言しようと思ってやっています。

倉坂 そういう外から見てわかることが多いと、より楽しめそうですよね。

田口 そうだと思います。試合中に劇的に変化することもありますからね。そういうものは、かなり上級者向けの見方かもしれないですが、楽しむ要素だとは思っています。そういったファンづくりはどうされていますか? ペアとはいえ、比較的に個人でのプロモーションになるわけですよね。

倉坂 そこは個人レベルでの活動ですね。最近では、地域に密着する動きもあります。川崎に、NTC競技別強化拠点の川崎市港湾振興会館ビーチバレーコート「川崎マリエン」というものがあるのですが、自治体としても強化してくれています。その街に対してアピールすることもあります。でも、個人の活動の難しさもありますね。藤井さんはファンとの交流もされていますよ。

藤井 ベテラン選手と組んでいたときに、いつも応援してくださる方に向けたファン感謝祭のようなイメージで、食事会を1年に1回、開いたりしていますね。

田口 そういったイベントは、あまり頻繁にはやらないということですよね。

藤井 私も以前は川崎のチームの所属していたことがあるのですが、その地域には、何選手かが所属するようなプロチームも存在します。そういう場合は、チーム単位で動けることもありますね。でも基本的には所属が違います。私は「市進ホールディングス」という学習塾が所属で、パートナーは福岡の会社に所属しているので、そういう場合はなかなか一緒にプロモーションできる機会が少ない。ペアはだいたい1、2年は一緒にやるのですが、そういった活動自体は個人で取り組むイメージですね。やる選手もいれば、SNSを全くやらない選手もいますし、人それぞれ。

田口 フットサルはマイナースポーツなのですが、だからこそできることもあると思っています。たとえば選手がプロモーションの先頭に立って、それをチームと一緒にやるとか。サッカーの規模感ではできないことが、いい意味でゆるいからこそできる。それは僕にとっても成長できるチャンスです。もちろん、フットサル選手としてレベルアップしたいですが、一方で、自分自身は人間としても成長したい。個人的には、フットサルの現状は、自分を伸ばせる環境だと思っているので、悲観はしていません。高校生まではプロサッカー選手になりたいと思っていましたが、今は違う世界のトップカテゴリーでやれていますからね。ただし、子どもたちに「(プロを目指して)フットサルをやりなよ」と自信を持って勧められるかというと、まだ「(プロ環境が整備されている)サッカーをまずはやりなよ」と伝える現状もあります。

藤井 フットサルはすごく競技人口が多いと思います。蹴れる場所が多いですよね。でも、ビーチバレーは本当に限られています。都内だと、府中のインドアコートや杉並区、平和島など、数えきれる場所しかないですし、コート数も多くはありません。砂浜でビーチバレーをできる機会が少ないから、その地域にないと、親御さんの送迎なども大変ですし、子どもには「バレーボールをやったら」と言ってしまいます。

田口 そういうところがマイナースポーツから抜け出すきっかけかもしれないですね。次の世代に夢を持ってもらえるような競技やその環境を整備すること。選手がすごく考えないといけないのかなと。

倉坂 メジャースポーツよりもプレーに必要な人数が少ないために、その点で言えばハードルは高くないからこそ、やれる環境の部分が大事ですよね。僕も会社勤めしていたときに「フットサルやろうぜ」ということでプレーする機会がけっこうありましたよ。人数を集めるのが大変なので「サッカーやろう」とはなかなかなりませんでした。

田口 そうですよね。だから伸びる要素はあると思っています。でも競技人口に対して、Fリーグというトップ競技を知らないケースが多い。いろんなところにフットサルコートがあって、蹴っている人がいるのに、トップリーグを見たことがない。そこの障壁はありますが、伸び率はあるのかなと。競技を知っているのに成長できていない業界であれば問題ですけど、今は「知らない」という層が圧倒的に多い。つまり、「知ってもらう」というところをまずはやっていかないといけませんよね。フットサル界は、「ポテンシャルはある」と言われ続けて、なかなか成果を出せていないですからね……。

倉坂 昨年、ロベカルが来たとき(編集注:2018年9月に、サッカー元ブラジル代表のロベルト・カルロスさんが来日して、Fリーグの公式戦に1試合限定で出場した)はどうだったんですか?

田口 盛り上がったんですかね……。

倉坂 ニュースで知りましたが、いつの間にか終わってしまいましたよね。

田口 フットサル、Fリーグの認知を最大化できたかというとそうではないですよね。スポーツ界、サッカー界の人の間ではかなり知ってもらいましたし、アクションとしては面白かったのですが、一般の方へのプロモーションとしては、十分な成果を得られなかったのではないかと思います。

倉坂 そういった売り出し方は大きな課題ですよね。

後編に続く。

【企画】スマートスポーツエンターテイメント株式会社
【取材】吉田亜衣(ビーチバレースタイル)、本田好伸(SAL)
【写真】軍記ひろし、吉田亜衣
【協力】フウガドールすみだ、ビーチバレースタイル、SAL

倉坂正人(くらさか・まさと)

1990年2月7日生まれ、石川県出身。石川県立工業高→早稲田大。三菱オートリース所属。

【JVA BEACH】

藤井桜子(ふじい・さくらこ)

10月15日生まれ、東京都出身。都立駒場高→日本体育大。市進ホールディングス所属。

【JVA BEACH】

田口元気(たぐち・げんき)

1991年7月3日生まれ、茨城県出身。鹿島学園高校→神奈川大。フウガドールすみだ所属。

【軍記ひろし】

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著者プロフィール

SAL

フットサルを見る・蹴る・着るという3つの視点から多角的に発信していくメディアです。見る人には、試合情報や技術・戦術などの競技の魅力、選手のキャラクターや物語を。蹴る人には、ボールを扱う喜びや仲間と蹴る爽快感を。着る人には、注目アイテムや、着こなしのアドバイスを。それぞれのニーズに合ったフットサル情報をお届けします。

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